原神×クロスアンジュ 第81話(1/3)『刻晴の判断』
この話には架空の政治的折衝、戦争描写があります。
原神×クロスアンジュ 第79話『サリアの復讐』、原神×クロスアンジュ 第80話『相互確証破壊』の一連の流れを知って、アル・ワースとの関りを断つことを考えた刻晴。
刻晴「ナヒーダ様、甘雨がこれ以上アル・ワースの悪影響を受けないようにするため、転送装置も破壊して、完全に2つの世界間は行き来出来ないようにしたら、どうなりますか?」
ナヒーダ「え?そんなことを本気で考えてるの?」
刻晴「当然です。
もうこれ以上、甘雨に狂気が伝染して私に被害が来るのは耐えられません」
ナヒーダ「璃月七星から、そんな選択が出るなんてね。
まず、契約違反よ。
原神×クロスアンジュ第34話『ヴィヴィアン砲、テイワットの国防に使うことを検討される』でモラクスが七神の代表となり、アル・ワースの魔従教団教主アマリ・アクアマリン、アルゼナルの前司令官アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ、そしてあなたの友人、パラメイル第一中隊長で現司令官サリア・テレシコワと結んだ契約に対する、ね。
4条、7条に正面から違反するわ」
刻晴「……私は責任を取って璃月七星・玉衡の職を辞職することになるんでしょうか」
ナヒーダ「辞職については私は国外の神だから断言できないけど。
そもそも、アル・ワースとの接触・開通を望んだのは、テイワット側よ。
原神×クロスアンジュ第10話『甘雨、正気を取り戻す』で、甘雨に原初の光を与えたいから『真実のアルゼナル』へ足を踏み入れることを手伝って欲しい、と言ったのは、私達だもの。
刻晴、甘雨、私の3人で彼女達に接触した日を忘れたの?
それをこちら側の都合で強引に断ち切るのは、契約の観点からも、道義の観点からも、決して褒められたものじゃないわね」
刻晴「……」
ナヒーダ「それに……そんなことをしたら状況を悪化させるだけよ?
一度2つの世界が繋がったことは世界樹が記憶しているもの。
装置を壊せば何とかなるわけではないわ。
アル・ワースにはアマリがいるのよ?彼女の召喚の術式があれば、二つの世界の壁なんて幾らでも飛べる。
例えばの話だけど、アマリがその気になったらアル・ワースから幾らでも機動兵器軍も人員も送り込めるのよ」
刻晴「うっ……」
ナヒーダ「まず、装置を壊して簡易的な行き来を出来なくした時点で、間違いなく魔従教団から追及される。
恐らくアマリは教主として契約の履行を求めに、直接こちらに来るわね。
刻晴、あなたその時なんて説明するつもり?
七神の許可もなく、契約違反も覚悟の上で、私が勝手にやりました、自分達から結んだ契約を自分達から破り捨てましたって言うの?」
刻晴「……」
ナヒーダ「ワタルへの美食の提供が出来なくなると言うことは、アマリはどんな手段でも使って取り戻そうとするわ。
目的が美食であれば全面戦争には避けられるかもだけど……刻晴、あなたの責任は間違いなく問われるでしょうね。
『刻晴はアル・ワースとテイワットの友好関係を維持する外交担当としてふさわしくない。担当の変更を要望する』と言われるのは必至だと思うわ。
後任は七神の誰か、璃月がまだ担当できるなら凝光も候補かしら」
刻晴「私が外交に失敗して、その尻拭いを神々が引き継ぐなんて……」
ナヒーダ「そして、月一の原初の光を甘雨に当てられなくなる。
原初の光はアル・ワースでしか取れないのだから。
それがどう言うことかは想像できるわよね」
刻晴「……ええ」
ナヒーダ「やがて、クロスアンジュの影響を受けた甘雨はクレイジーサイコレズを再発し、誰も止めることが出来なくなるわ。
例え、モラクスであってもね。
それに、アル・ワースと行き来する術を切るってことは、最後の安全装置であるヴィヴィアンも切るってことだもの。
ヴィヴィアンは確かに仲間想いだけど、裏切った相手をそれでも敢えて守るような人では無い。(原神×クロスアンジュ第56話『ヴィヴィアンvsヴィヴィ暗』)
裏切ったあなたを、ヴィヴィアンが守ってくれるかどうかは、かなり怪しい。
いずれにせよ、甘雨は何を排除してでも、何人殺してでも、刻晴を手に入れようとするでしょう」
刻晴「……!!」
ナヒーダ「世界樹は『もしもの世界』も記録されているわ。もしそれをしたら、どうなるか見てみる?」
刻晴「恐ろしいですが……見てみます」
ナヒーダ「それじゃ、行ってらっしゃい」
もしもの世界:二世界の繋がりを断った場合
世界樹の「もしもの世界」とリンクした刻晴の意思。
アル・ワースとの行き来するあらゆる手段を破壊し尽くして、1ヶ月が経った時。
定期交流会が開かれず、転送装置が破壊されたことを知ったアマリにより、魔従教団の使節団を組んでテイワットを訪れていた。
群玉閣へ魔法陣が展開し、アマリ・アクアマリン、イオリ・アイオライト、ホープスがやってくる。
アマリ「久しぶりですね、凝光さん。
何故、私がここに来たかは、もうお分かりですね?」
凝光「……ええ」
ホープス「あなた達は一方的に契約を破りました。
ワタル様への美食提供が滞っており、マスターはご立腹です」
イオリ「凝光さん、悪い事は言わないから従った方が良い……
美食が目的なので、戦争で損害を出すことは避けたいと言っていたが、天野さん(アマリの本名)がキレたら何をしでかすか……」
刻晴「凝光は悪くない。
私の独断でやったことよ」
アマリ「刻晴、あなたが二つの世界を断ち切ろうとした理由は大体分かります。
『アンジュさんとサリアさんの喧嘩を見て、甘雨が影響を受けることを懸念した』でしょう?」
刻晴「……そうよ」
アマリ「その判断、二つの世界を断ち切ろうとした行為。
ノーマを『マナ社会の秩序を乱す、暴力的な化け物』と言って差別・迫害したミスルギ皇国の貴族やマナ人類と何が違うんです?
……まさか、あなたまで『ノーマは人間じゃない』『感情のままに生きる化け物』『ノーマ相手なら契約を破って良い』なんて言いませんよね?
マナ人類はエンブリヲに操られていたと言う情状酌量もありますが、あなたにはそれもありません。
あなたがそれを言ったら『璃月は差別を認める国』と宣言していることになりますよ?どうなんですか?玉衡」
刻晴「貴女、私を何だと思っているの!そんなこと言うわけないでしょう!それに璃月が差別を認めてるなんて、話を拡大しないでよ!」
アマリ「差別的意図が無かったにせよ、やはり一方的に契約を踏みにじる璃月は信用できないと言うことも事実です。
刻晴、あなたは公人なんですよ?あなたのやったことは、璃月の意思と見做されます。一個人の暴走では済まされないのです。
『璃月は差別を認めているのか?』と周囲に思わせたことを反省すべきでは?
私達が来なかったら、どうするつもりだったのですか?
璃月を飛ばして草神、雷神、炎神のところへ行って、こういうことが起きていると洗いざらい話されたら、どうするつもりだったのですか?」
刻晴「契約内容の比較的初めの総則の中に『二世界間でトラブルが起きた場合、まずは璃月が対応する』とあるでしょう!まずは璃月に来なさいよ!」
アマリ「契約を破った張本人が言って良い台詞ですか?
『お前が言うな』って言葉知ってます?
それに、璃月側が契約を破っているにも拘らず、私達は契約を守って璃月に来たのですよ。それについてはどうお考えで?」
刻晴「くっ……」
イオリ「おいホープス、天野さんって……こんなに正義感が強かったんだ?」
ホープス「マスターは普段はワタル様のことしか考えていないように見えるが、元から正義感は強い。
それに、ワタル様からも『アマリさんは正義の魔法使い』と思われているからな。
ワタル様に恥じない自分で在りたいと思っているんだよ。
……そこの癇癪玉衡と違ってな」
出発前のアマリとワタルのやり取り
ワタル「アマリさん、テイワットに行くの?」
アマリ「悪いことをした刻晴さんを𠮟ってくるんです。戦うわけではないので、ワタルくんが来る必要はありません」
ホープス「(まあ、外交交渉だからな。
ワタル様を連れて行くわけには、いかないだろう。
それを叱ってくると表現するあたり、さすがですね、マスター)」
アマリ「帰ってきたらワタルくんにも結果は教えますから、良い子で待っててください」
もしもの世界:刻晴、外交官権限を剥奪される
アマリ「このやり取りで、把握しました。
刻晴は外交担当として相応しくありません。
新しい外交担当について希望します」
アマリは書面を提示する。
モンド:△
風神バルバトスは責任と言った言葉とは、かけ離れている。
ジン団長は人間的には信頼出来るのだが、ただでさえ加重勤務なので、出来る限り希望はしない。
これはジンの体調考慮もあるが、ジンが過労で倒れた場合にアル・ワースへ責任転嫁されることを避けるためでもある。
璃月:×
契約の国と言いながら、契約を一方的に反故にするような国は信用できない。
あなた方の言う契約とは、自分にとって都合の良い契約で他人を縛り、都合が悪くなったら破り捨てて開き直るのが契約なのか?
そんな国と、まともな同盟、友好関係を組めるとお思いか?
それがアル・ワースの法と秩序を守る組織である魔従教団の正式な見解・回答である。
稲妻:〇
雷電影、九条裟羅、八重神子、神里の兄妹は信頼できる。
雷電影が追及する『永遠』に向けて、二世界間の交流を続けることが出来る。
また、八重神子は食わせ者ではあるが、彼女のユーモアセンスは二世界間の交流に置いては程よい刺激となる。
スメール:◎
草神ナヒーダはアル・ワースとテイワットが繋がって早くの時期から新生エクスクロスと交流があり、また豊富な知恵で未来を見据えており、ヴィヴィアンとも個人的な信頼関係があるため、魔従教団としても一番信頼できる。
出来るならスメールに後任を引き受けてもらうことを希望する。
それが諸般の事情で叶わない場合、稲妻かナタを希望する。
フォンテーヌ:△
最高審判官ヌヴィレットは信用できるのだが、彼とは交流が少なくお互いのことを良く知らない為、優先度が低い。
フリーナは神の座を降りているため、彼女を外交問題に引っ張り出すのは、フリーナの心労を鑑みると避けたい。
これ以上、外交問題を大きくしないため、フォンテーヌとモンドは避けることを勧める。
ナタ:〇
炎神マーヴィカは裏表が無く、非常に話がしやすい。
ナタの武道大会を通してパラメイル第一中隊の雰囲気が柔らかくなった借りもあるので、こちらとしてもナタなら率直に話が出来る。
炎神も私達のことを気に入ってくれているようなので、優先度は高い。
刻晴「何なのよ、これは!」
アマリ「至極当然の、正当な評価ではありませんか?
私達は一方的に契約を破られたんですよ?」
刻晴「だからと言って……!
サリアだって、そっちの世界が甘雨に影響を与えることを申し訳ないと言っていたじゃない!」
アマリ「それはサリアさんの個人的な感傷に過ぎません。
感傷に甘えて、契約を一方的に破り捨てることが、璃月では許されるのですか?
……サリアさん、泣いていましたよ?『私達は出会うべきでは無かった』って。
ああ、サリアさんからの手紙を預かっていたんでした。刻晴への、ね」
ホープスがサリアからの手紙を刻晴に渡す。
サリアの手紙の内容は、以下の通りだった。
『刻晴、甘雨に悪影響をもたらしたのは、間違いなく私とアンジュの喧嘩が原因。
謝っても許してもらえることじゃないけれど、本当にごめんなさい。
もう二度とパラメイル第一中隊はテイワットにはいかない。
今回アマリに声を掛けられ、誘われたけど、あなたに合わせる顔が無い。
魔従教団についてはアマリと良く話し合って。
最後に、甘雨の症状が少しでも良くなることを願ってる。
それだけは本当だから』
サリアの筆跡は几帳面な彼女の性格を表して、本来凄く綺麗な字なのだが、ところどころで字が震えているところもあった。
だが紛れもなくサリア本人の字であることは刻晴も理解した。
刻晴「……ッ!!」
アマリ「あなたのためじゃありません。
サリアさんが泣きはらした顔で頼むから、渡しただけです。
それに私達は、契約の上では鍾離さんが代表なので、私は彼のところに問い詰めに行くつもりだったんですが、サリアさんが『それをすると刻晴は凄く気に病むと思う。あの子は神に頼らずに人間の手で国を作るってことを誇りにしてるから。だから、まずは凝光、刻晴のところを訪ねてあげて』って言ってたんですよ。
感謝されこそすれど、怒鳴られる筋合いはありません」
刻晴「サリアが……」
刻晴の脳裏には、フォンテーヌでシャルロットの取材を受けて、テイワットの人間関係を正確に分析していたサリアを思い出す。(原神×クロスアンジュ第44話『フォンテーヌ観光』)
ホープス「やれやれ。
法と契約の象徴である璃月七星・玉衡が感情のままに喚き散らし、感情の塊と言われるノーマ(サリア)が理性的とは、これほどの皮肉はありませんな。
やはり、この国の言う『法』と『契約』とは、権力者が下々の者を縛り付けるための『法』と『契約』なのだろう。
ミスルギ皇国のノーマ管理法のようにな。
……璃月の民が相手なら、不平等な契約を押し付けても、都合が悪くなったら怒鳴りつけて一方的に契約を踏みにじっても、玉衡の肩書を出せば押し通せるのだろう。
だが、我々はアル・ワースの魔従教団だ。
この国には対等の立場と言う概念は無いのか?
上か下かと言う、支配・従属の概念しかないのか?
それが契約の国とは、片腹痛いな」
アマリ「……冷静な会話が出来ないなら、やはり岩神のところへ行きましょう。
サリアさんへの義理は果たしましたから。
ホープス、イオリくん」
凝光「待って。
……刻晴、あなたがいたら冷静な会話が出来なくなる。
天権として、今この瞬間、あなたを外交担当から外す。
そして、この部屋から出て行って。
この部屋は今から折衝の場になる。
結果は追って連絡するから」
刻晴「……分かったわ」
刻晴は、自分が契約を踏みにじったにも関わらず、気遣いをしてくれていたサリアと凝光の冷静な判断に、冷静さを取り戻す。
そして一旦、群玉閣を後にした。
もしもの世界:外交戦線、凝光の折衝
凝光「全く……自分がやらかしたことを棚に上げて怒り狂うなんて、そんな恥知らずなことを、これ以上させるわけにはいかないわ……
ええ、今回のことについては100%璃月側の落ち度よ。
今回のことは刻晴の個人的な恐怖が原因であり、差別的意図は一切なく、璃月が差別を認めてるなんてことは無いことは申し上げた上で、丁重に謝罪する。
外交国担当変更の要求は、至極当然だわ。
スメール、稲妻、ナタへ使者を送り、3国の何れかが後任になったら改めて伝えたい。
1ヶ月後に又群玉閣へ来ていただける?
美食についても今から手配する。ワタルに持って帰るためのものね」
アマリ「念のために私が見ている前で作っていただき、なおかつホープスに毒見させます。
教主であり、召喚・転移の術式を操る私を毒殺することを企まないとは言えないので。
ホープスは魔法生物なので毒は効きませんが、あらゆる成分を分析できます。
それに、万一私が倒れても、イオリくんも教主候補だったため、召喚・転移の術式は使用できます。
私達以外にも、魔従教団には召喚・転移の術式を操る術士はいます。
……くれぐれも、おかしな事は企まない方が、お互いのためですよ」
イオリ「ああ……それにもし、天野さんが外交戦争で毒殺なんかされたら、俺も黙っちゃいない。
戦争は望まないが、そんなことになったら璃月か魔従教団、どちらかが滅ぶまで殲滅戦になるな」
ホープス「このオド袋(イオリ)め。私の言いたいことを横取りしおって」
凝光「……当然ね。
私達が今更、自己弁護しても、信じてもらえないでしょうから」
アマリ「それと、可能なら刻晴を璃月の責任ある役職から解任させることを希望します。
彼女が要職にいる限り、璃月からの美食提供は安心して受け取れないですし、毎回ホープスに毒見させることになりますから」
凝光「人事については岩王帝君がいた頃は帝君がしていたけど、今は私がしている。
希望は聞いたけど、最終的な人事権については私にあると言うことは忘れないで。
……毒見は受け入れる。
刻晴の態度は、それを疑わせるに足る態度だったから」
アマリ「刻晴の解任要求については前向きに検討していただけますか?」
凝光「アクアマリン卿。
先程も言った通り、希望はお聞きしたけど、最終的な人事権は私にあるわ。
そこまで信用ならないなら『璃月からの美食は、そもそも受け取らない』と言うのも、アル・ワース側の選べる選択にあるのよ。
あくまで璃月の美食を受け取るのは、アル・ワース側の『受け取ることが出来る権利』であって『受け取らなければならない義務ではない』のだから」
アマリ「受け取るか受け取らないかは、私達アル・ワースに決める権利があります」
凝光「分かっているわ。あくまで、提案しただけよ。
アマリ・アクアマリン卿は食べ物を粗末にすることを許さない、正義感の強い女性だとお伺いしている。(スパロボX 第38話『私の大切な場所』)
そんなアクアマリン卿に、いつまでも『毒殺されるかもしれない』なんて考えを抱かせたまま食事を召し上がらせるのは、忍びないもの。(表情はあくまで穏やかに)」
ホープス「ほう……」
凝光「非を認め、謝罪し、失礼を働いた刻晴は外交官から罷免した。
刻晴が毒殺を目論むかもしれないと言う主張も理解出来るから、毒見も受け入れる。
あなた方は最終的に、どこに落ち着けば満足なのかしら?」
もしもの世界:戦争犯罪
アマリ「どこに落ち着けば満足なのか、ね……
その前に凝光さん、いくつか伺います。
法の『属地主義』『属人主義』はご存じですか?」
凝光「天権として当然知っているわ。璃月の法を担当するのは、私なんだから。
属地主義は『どこで起きたか』でどこの法を適用するか(例えば、スメール国内で起きたならスメールの法を適用する)で、属人主義は『誰が起こしたか』で適用する法が変わる(例えば、璃月で内乱を起こそうとした者が国外逃亡して、モンドで捕まったら、璃月の法を適用する)。
……ここの認識は、祖語は無いわよね?」
アマリ「ええ。祖語はありません。
では次に、璃月の刑法は、傷害事件についてはどちらを採用していますか?」
凝光「もちろん、属地主義よ。
例えば宝盗団が各国で捕まった場合や、一般人でも他国で喧嘩して捕まった場合、全部璃月で裁いて行くのは物量的に不可能だもの」
アマリ「何故、私達が刻晴の解任に、ここまでこだわるのか、お伝えしましょう。ホープス、あれを」
ホープス「はい。マスター」
ホープスが魔道具を使う。
新生エクスクロス格納庫で起きたサリアとアンジュの大喧嘩(金的蹴り、電気アンマ、グレープフルーツクロー、オマンコ天国)を知った後の刻晴が、基地の廊下内で映っていた。
映像の中の刻晴「何よ、あれは……!確かにアンジュがいつもサリアをいじめていたのは私も知っているけど、やり返すにしても……あれは拷問よ!獣の所業よ!」
刻晴は璃月の法典を取り出して見直す(刻晴の待機モーション)。
映像の中の刻晴「そうよ。
自力救済の禁止は璃月の法でも当然。
璃月だったらサリアは一生太陽を拝めない地下牢で、あるいは層岩巨淵の地下鉱区、一番深いところで死ぬまで鉱山を掘り続けて、自分のしでかしたことを悔い改めさせることになるわ」
凝光は映像を見て、汗を流していた。
アマリ「刻晴さんはサリアさんを璃月なら終身刑だと言ってましたが、事件が起きたのは璃月ではありません。
……それどころか、テイワットですらありません。
アル・ワースの新生エクスクロス基地です。
しかもサリアさんはアル・ワースの人間です。
そこに璃月の法を持ち込んで、サリアさんを裁こうとは……
しかも奴隷のように扱おうとは……!」
凝光「……アクアマリン卿、あなたの怒りは至極ごもっとも。
他国の民を根拠も無く攫って強制労働させるなど……仮に戦争中であっても戦争犯罪だわ」
アマリ「凝光さん。璃月はアル・ワースを属国、あるいは植民地だとでも思っているのですか?
私達の同盟契約は、私達の武力を取り込んで璃月の先兵にすることが目的だったのですか?
その真の目的は?武力でテイワットを統一?
はたまた、宇宙に出て別の星の侵略?
魔従教団は、他国の民を攫って強制労働させるような国の侵略には、断じて加担しません」
凝光「……そんな考えは、微塵も無い」
ホープス「まあ、本当にサリア様を攫って行った場合、我々と衝突は避けられないから、二世界間を隔離しようとしたのだろうがな」
アマリ「アル・ワースの法と秩序を司るのは、璃月ではありません。私達、魔従教団です。
そこに璃月の法を持ち込んで適用させてサリアさんの人権を奪おうと言うのなら、私達は仲間であるサリアさんを守るために、璃月と戦います。
アンジュさんなんか、『サリアへの仕返しは、私が落とし前をつけるのよ!お行儀の良い国の法律を当てはめて、サリアの自由を奪うな。サリアを返しなさい!』と言って、ディスコード・フェイザーを璃月港に打ち込んでサリアさんを奪って行くでしょうね。
傷害事件の被害者が加害者を助けに来て命を賭けるなんて、刻晴には理解出来ないでしょうけど。
理解できないのは仕方ありません。
彼女は生まれた時から法と秩序に守られた国の貴族の出身で、そんな国の役人ですから。
被害者が加害者と和解したり、加害者を許すことはあっても……
被害者が加害者の為に命を賭けて戦うなんてところ、どれだけ法治国家の法令や判例を読み込もうが、載ってないでしょうからね」
凝光「待って。刻晴はそもそも法律を司る業務ではないわ。
彼女は建設や都市建物の開発が主な仕事よ。
もし彼女が職権を超えてそんなことをしたら、私が止める。
……刻晴、あの子……普段から私の仕事を手伝ってたからと言って、自分の業務範囲も把握してなかったの?」
アマリ「凝光さん、お答えください。
サリアさんは、璃月の法律で裁かれますか?」
凝光「答えはノーよ。
彼女はアル・ワースの人間。
アンジュとの争いについては、アル・ワースの法で裁くべきだわ」
アマリ「ノーマの皆さんには、法治国家の厳格な法をいきなり適用するのではなく、ある程度はアルゼナル時代のルールを適用しています。
勿論、理不尽に彼女達を虐げるルールは廃棄した上で。
彼女達には、彼女達の生き抜いて来たルールがあるのですから。
アレクトラ元司令から軍規を貰っていますが、サリアさんの場合は『基地内で喧嘩したため、便所掃除1週間。喧嘩両成敗』です。
今頃、アンジュさんと一緒に、文句を言い合いながらも掃除してると思いますよ」
ホープス「刻晴の態度を見ていると、スメールやモンド、稲妻などの隣国にも璃月の法を持ち出してトラブルを起こしていそうだな。
まぁ、璃月が他国と衝突しようが、我々には関係ないがな」
アマリ「分かりましたか?私達が彼女の解任にこだわる理由が。
彼女なら後先考えず、サリアさんを璃月に連れて行って裁くために最も障害となる私を毒殺しようとして、ワタルくんに被害が出るかもしれないと警戒する理由が」
凝光「……部下の教育不足だったわ。
刻晴には、自分の業務範囲と法の適用範囲について、しっかりと教育しておく」
もしもの世界:一触即発
アマリ「私にとって全てに優先するのはワタルくんです。
ワタルくんに食べさせる料理に、万一、いや億が一にでも毒が入ってるかもしれないと言う疑いが合ってはなりません。
その可能性を払拭するためなら、私は正義も捨てるし、ホープスによる毒見だって何千回でも続けさせるでしょう」
凝光「それはあなた達の好きにしてもらって構わない。あなた達の権利なのだから。
毒見は受け入れる、作るところに居合わせろと言うのも受け入れる。
人事権は、私の管轄だから今後の彼女の処遇については、私にお任せいただきたい。それだけよ。
……ワタル、ね。
彼はここに来ていないの?」
アマリ「彼はまだ小学4年生なんですよ?
アル・ワースとテイワットの外交交渉の場所に連れてくるはずがないでしょう。
それでも彼はアル・ワースの救世主です。彼の言葉には、無視できない影響力もあります。
刻晴が差別的対応をしてノーマの皆さんを傷つけたと言うことを、彼に知られることは、璃月にとってもダメージになってしまうのでは?」
凝光「なるほどね。彼はまだ璃月と新生エクスクロスが外交的に揉めていることを知らない。
アクアマリン卿としても、知らせたくない。
璃月としても、知られたくないと言うのは同意出来るわ。
なら、お互いに丁度いい落としどころではないかしら?」
ホープス「別に我々は璃月を属国化しようとは思っていない。
それに、全面戦争になったらワタル様の知る所になってしまう。
マスターも、それは避けたいと思っています。
……璃月の主権を守るために、凝光様の提案は至極当然のものでしょう。
この辺が妥当なところだと思いますが、どうでしょう、マスター?」
アマリ「(しばし凝光と睨み合い)……まあ、取り敢えずは、それでいいでしょう。
ホープスの言う通り、私達は璃月を属国化するつもりはありません。
テイワットの外交担当国の後任が決まるまでは凝光さん、貴女に対応してもらいます」
凝光「ええ。それまで刻晴は外交には関わらせない。
信用できないかもしれないけど、そこは必ず守るわ」
イオリ「勘違いしないで欲しいんだが、全面戦争を望まないのはワタルに知られたくないからと言うだけじゃない。
本当は天野さんは優しい人なんだ。
全面戦争になったら、俺達、魔従教団はアル・ワースから一方的に転移して来て作戦を展開出来る。
……つまり、千岩軍が璃月の民を守る為に部隊を展開する時間すら与えずに、民から殺して行くことも出来ると言うことだ。
だが、天野さんは何の罪もない民に被害が出る全面戦争は避けたいと思っている。
そんな優しい天野さんを毒殺するようなことがあったら……俺は悪魔にでもなって璃月に復讐する」
ホープス「岩神モラクスや降魔大聖、その他の仙人達と言えど、位置を把握した上で離れた場所に転移すれば、彼らが来る前に殲滅して引き上げることは充分に可能だからな。
我々はそれを繰り返すだけだ。
そして軍とは『民の信頼』が無いと力を発揮できない。
千岩軍が民を守れず、民が次々に殺されていったら、生き残った民からも『千岩軍は何をしているんだ』と突き上げを食らうだろう。
千岩軍にだって守るべき家族がいるはず。
それを守り切れずに消されていく絶望の中で戦える兵士がどれだけいる?
そうなると千岩軍が総崩れするのも時間の問題だ。
かつてのアルゼナルがドラゴンの襲撃からマナの国を守っていたのと同じ、いやそれ以上に絶望的な戦いになるだろう。
テイワットの他の国からの支援を受けられては厄介だが……ことの発端である刻晴のノーマへの差別行為、一方的な契約破棄に加え、マスターの毒殺を明るみに出せば、テイワット内でも璃月は孤立無援になるだろう。
自由、永遠、知恵、正義、戦争。
どの国であっても璃月に義があるとは判断しないだろうからな。
我々の神出鬼没の戦術を敵に回して、自国の民を危険に晒してまで璃月を助けようと言う国があると思うか?天権殿?」
凝光「……悔しいけど、望み薄ね」
ホープス「しかも、我々はアル・ワースからそれを行える。
あなた達が我々の本拠地を叩こうにも、癇癪玉衡が転移装置を全て破壊したからな。
閑雲……留雲借風真君さえ仕留めれば、転移装置の復元を出来る存在もいなくなり、最早あなた達が我々を攻撃する手段は、永遠に無くなる。
全面戦争になったら、それは片方にだけゴールがあるサッカーのようなものだ。
初めから、あなた達に勝機など無いのだよ」
凝光は冷や汗を流すが、深呼吸をして努めて冷静に対応する。
凝光「……ふぅ。
あなたに、そのような事をさせずに済むよう、全力を尽くすわ。
イオリ・アイオライト、ホープス」
アマリ「やめなさい、ホープス、イオリくん。
必要以上に凝光さんを脅す必要は無いわ。
先程も言った通り、私達は璃月を属国にしたり、支配したり、あまつさえ虐殺をしたいわけではない。
魔従教団が罪もない民を殲滅するところなんか、ワタルくんに知られるわけにいきませんから。
それに……やっぱり、私自身、何度か璃月に来ているけど。
(原神×クロスアンジュ第41話『璃月観光』
原神×クロスアンジュ第67話『魔法騎士サリアース』)
この平和な都で、未来を背負う璃月の子供達を手に掛けたくはないですし。(群玉閣から璃月港を見下ろして、民の活気あるところを見て)
何より、凝光さんが『誠実に』対応してくれれば、そんなことにはならないのですから。ねぇ?」
凝光「……ええ、勿論よ。
民に被害が出る全面戦争なんて、私達も望まないから」
もしもの世界:堕ちた麒麟
刻晴は甘雨を不卜廬に強制入院させていたが、普段の仕事の忙しさを理由に甘雨への見舞いもロクに出来ていなかった。
アマリを中心とした魔従教団が璃月を訪れてから更に1ヶ月が経ったある日、不卜廬にて。
甘雨「私は刻晴さんのところに行くんです!
白朮先生、邪魔をするなら貴方から射殺しますよ……?」
白朮「……分かりました。
私では逆立ちしても甘雨さんには勝てませんからね。
不卜廬に入院している他の患者さんや不卜廬の職員も何人も怪我をさせられていますし、不卜廬ではもう診れません。
もう、あなたは強制退院です。
玉衡には私から伝えておきます」
甘雨「分かってくれればいいんです」
そして不卜廬を後にする甘雨。
町で刻晴を見つけるが、街の男性と話をしているところだった。
実際には、男は刻晴に道を聞いただけだったのだが、甘雨の思考はこうだった。
『刻晴さんは、私を捨てて見知らぬ男と幸せになろうとしている』
『私が不卜廬に入れられたのも、あの男がいたから』
『アル・ワースとの繋がりを断ち、私の治療を止めたのも、あの男に目移りしたから』
『私から刻晴さんを奪うなんて、許せない許せない許せない』
甘雨の中ではそれが真実になってしまい、その男の後をつけて自宅を突き止め、男を掴まえて拷問にかけて殺すことには全く抵抗が無かった。
刻晴「うっ……」
刻晴は世界樹が見せる「もしもの世界」から、即座に目を離した。
刻晴は、自分の行動が璃月の外交的評判を地に落とし、善良な璃月の民を死に追いやり、甘雨を残虐な殺人犯にしてしまうところだったことを自覚した。
刻晴「はぁっ……はぁっ……」
ナヒーダ「刻晴、あなたはアル・ワースと繋がったらこうなったんだ、と思ってるかもしれないけど。
アル・ワースで原初の光を当て続けているから、少し愛情表現が過激でも、基本的には今までの優しい甘雨でいられるのよ。
それを切ったら、こうなるのは自明の理。
……それに、私は聞いたわよね?
原神×クロスアンジュ第10話『甘雨、正気を取り戻す』で」
刻晴「そ、それは……」
ナヒーダ「あの時、刻晴が『甘雨に秘書を辞めさせて、人間の秘書を何人か雇います』と言う道を選んでいれば、甘雨はそこまで暴走せずに済んだ。
だから、『生半可な覚悟じゃ出来ない』と私は言ったの。
でも、刻晴は一度、甘雨を受け入れた。
どこまでも一緒に添い遂げると誓った。
その『契約』を破るなら、こうなるのは当たり前だわ。
……もし刻晴が本当に『もう甘雨の事なんか、どうなっても知らない』と言うなら、人を殺めた甘雨を罪人として捕らえて、裁くことになるわね」
刻晴「そんなこと……出来るワケないでしょう……」
ナヒーダ「もしこれがヴィヴィアン砲だったら、さっきの続きで
『甘雨が璃月の住民の男を殺めて、逮捕されるところ』
『甘雨を捕らえられる人は、神・仙人を除けば刻晴か凝光か申鶴くらいしかいない』
『なので刻晴が甘雨を捕らえて、裁判を受けさせ、死刑台に送る』
ところまで、しっかりと見せられていたでしょうね。
裁判の場面では、男の遺族が甘雨に憎しみの呪詛を投げかけていた。
刻晴が目をそらした、さっきの世界樹の記録の先は、本当にそうなっているの。
本当に『甘雨なんか、どうでもいい。どうなっても知らない』なら、これはただのストーカー事件で、あなたは殺人犯を成敗しただけ、よね?
ヴィヴィアン砲・本気モードのvs刻晴戦で作られた物語と違って、あなたが民を直接死なせたワケじゃないんだから、全部ストーカーが悪いんだものね?
テイワットでの璃月の評価が下がるのは契約の国が契約を破ってしまったからには仕方無し、でも戦争は止められたからテイワットの平和は守れた。
七星としてのあなたの地位は辛うじて凝光が守ってくれる、ストーカーもいなくなってやっと一安心、かしら?」
刻晴「もうやめて!
私が、私が間違ってたから!」
ナヒーダ「ふふっ……ごめんなさい、ちょっと意地悪し過ぎたわね。
でも、安心して。あなたが璃月七星として、しっかりと甘雨と共に『1000年先の璃月を見据えて』歩いて行けば、その願いは叶うわ。アル・ワースと言う隣人も一緒に、ね」
クロスアンジュ 天使と竜の輪舞
刻晴「サリアとアンジュの衝突は、もっと健全なものに出来ないんでしょうか……」
ナヒーダ「うーん、難しいでしょうね。
テイワットでは考えられないくらい過酷な環境で生き抜いてきた人達だもの。
サリアは刻晴に少し負い目を感じてるようだし、ある程度は頼み事も聞いてくれるかもだけど、アンジュは無理だと思う。
ヒルダの声を借りるなら
『(ヒルダの声で)アタシ達は常に死ぬか生きるかのギリギリの環境で戦って来た。その経験が無いヤツが言っても、綺麗ごとに過ぎないぜ、玉衡サマ。
それに、テイワットだってファデュイ、アビス、魔神戦争など危険なことは幾らでもあったんだろ?
そんな連中に、アタシやアンジュのことをどうこう言われたくないね』
とか言いそうね。
ヒルダって普段はアンジュ大好き!な部分に目が行きがちだけど、彼女も本当に過酷な地獄を生き抜いて来たんだもの」
刻晴「(ナヒーダの、ヒルダの物真似に苦笑して)でも、ナタの武道会では、あんなにいい試合を見せてくれたのに。サリアもアンジュも」
ナヒーダ「それはね、彼女達の姿の綺麗な部分の、ほんの一面に過ぎないわ。
刻晴、まるで『見てはいけないものを見てしまった』って感じね?」
刻晴「それは……えっと……」
ナヒーダ「なるほど……サリアが物凄い勢いで、今までにされたことを何倍にもしてアンジュに反撃したことを……見てしまったのね。
あの時のサリアは、アンジュからプライド、尊厳を何度も何度も踏みにじられたことに対する、魂からの報復でしょうね。
でも、命だけは絶対に奪わない。
そこに彼女達の憎しみだけでは説明がつかない、余りにも面倒で、厄介で、こじれた関係があるの。
……ヴィヴィアン砲本気モードで言われたかもしれないけど、ヒルダって昔はアンジュを殺そうとして、ドラゴン討伐に出た際にヴィルキスの排気口にブラジャーを詰まらせて、ヴィルキスを墜落させたこともあるのよ?(クロスアンジュアニメ4話)」
刻晴「ヒルダが……アンジュを殺そうとしていた!?」
ナヒーダ「ヒルダは今でこそアンジュのためなら何でもする人で、アンジュのことが大好きなヒルダは見ていて微笑ましいけど。
でもね、ゾーラ隊長(サリアが副長時代の隊長)の死因になった、アンジュの初陣の敵前逃亡……それまで皇女様だった人がロクに訓練も無く、パラメイルの操縦適正があるからっていきなり戦場に出されたらパニックになるのなんて予想がつくし、アンジュが悪いわけじゃないんだけど。
とにかくアンジュの敵前逃亡に巻き込まれたからゾーラは死んだ、アンジュが殺したんだ、ってヒルダ、クリス、ロザリーは凄く恨んでたのよ。
本気で殺意を持って、事故死に見せかけて殺そうとしたのよ。
アンジュが生き永らえたのは、無人島に墜落したはずが、タスクがそこで隠居生活をしていたから。
タスクはサバイバル能力が高かったからね」
刻晴「千岩軍だったら有り得ません。
仲間の足を引っ張って事故死に見せかけて殺そうとしたことが明るみに出たら、除隊の上で裁判にかけられて、殺人未遂で裁かれます」
ナヒーダ「そりゃ千岩軍は志願制だもの。
それに軍に対する法律だってしっかりあるじゃない。
アルゼナルはノーマと言うだけで徴兵されて、刑務所に入る時のように身体中の穴と言う穴を徹底的に身体検査されて(クロスアンジュ アニメ1話)強制的に戦わされる上に消耗品扱いだったのよ。
アルゼナルの場合、仲間を殺したことがバレたら銃殺刑。
ただし、ヒルダみたいに腕のいいライダーで稼ぎがあれば、キャッシュを払えば独房にしばらく入れられるだけで済むの。
何故なら、『新兵一人を失ったことより、腕利きのライダーを失う方が損失』と言う、人命や人権なんて欠片も意識してない損得勘定だけだから。
『手酷い目に合わせても命だけは取らないことが、絆の証になる』のよ、彼女達にとってはね」
刻晴「……なんて環境なの。
私がその場にいたら、ゾーラ隊長を打倒して……
いや、司令官のアレクトラをも打倒して私が司令になり、法と秩序を立てます」
ナヒーダ「そんなことをしたら、『ノーマどもが怪しげな動きをしている』と言われてマナ人類から抹殺されるでしょうね。
ノーマは人間として扱われてなかったのよ?
マナ社会をドラゴンから守るための生贄。
差別されるための存在で、必要悪だった。
そんな存在が秩序立てた動きをしたら、マナ人類が危機感を覚えるのは必至でしょう?」
刻晴「それは……」
ナヒーダ「アレクトラは、そんな状況を打破するために、エンブリヲを倒してノーマを解放することを目的にしていた。
それがアレクトラの目的『リベルタス』なの。
アレクトラは一度エンブリヲに心を壊されているから、リベルタス自体が歪んで、エンブリヲへの復讐の手段になり、手段が目的になっていたけどね。
それをアンジュが正して、『ラスト・リベルタス』としてエンブリヲを打倒したの」
刻晴「……例え、誰かがゾーラやアレクトラに成り代わったところで、何も変わらなかったんですね。彼女達の道は」
ナヒーダ「そう言うこと。刻晴には理解しづらいでしょうけど、彼女達の過酷さは想像を絶する世界で生きて来た。
今言ったのは、ほんの一例よ。
そもそも、『ノーマは人間として扱われていなかった』のよ。
ノーマの命は消耗品に過ぎなかった。
ドラゴンからマナ人類を守るための防壁装置に過ぎなかった。
前司令官のアレクトラもノーマだから、『ノーマは数が少ないから人命は貴重だ』と言っても出来る事なんて限られてた。
だから『やられたら何倍にもして返す』『絶対にナメられてはいけない』と言うルールが成り立つの。
サリアは最近刻晴との交流を経て落ち着いて来ているけど、アンジュはサリアが可愛いからって、サリアをいじめているのは相変わらずだもの。
それが爆発して、ああなっちゃったのでしょう。
誰も責めることは出来ないわ。
彼女達の価値観だったら、あの二人は『基地内で喧嘩したためトイレ掃除一週間』ってところよ」
刻晴「……はい」
ナヒーダ「彼女達もアルゼナルの頃のことは話したくないだろうから、聞いても言葉を濁されるかもしれない。
でも、それも当たり前だと思うわ。
『ノーマは人間じゃない』『マナ社会を壊す歪んだ存在』『化け物』と差別されるためだけにエンブリヲに利用されていたんだもの……
私は世界樹からアクセスして見れるけど……アマリが言っていたけど、『マナ人類よりノーマの方が生き物として優れてる』は私もその通りだと思うわ」
スパロボX 第37話『誰も知らない明日へ』より回想
アマリ「ミスルギの愚民は、ハッキリ言ってアンジュさんに殺されても文句言う資格無いと思います。
アンジュさんがアルゼナルを脱走して帰った時もジュリオ皇帝の罠でアンジュさんを捕まえて、処刑しようとして、その理由が『ノーマだから』ってどういうことですか。
誰一人、アンジュさんを助けようとしない。止めようともしない。
それどころか、皆、口を揃えて『吊るせ』コールって、愚民って言う言葉がピッタリじゃないですか。
アンジュさんが射殺したのって銃を向けてきた相手だけだし、それって正当防衛ですよ」
アンジュ「アマリ……」
アマリ「後、ノーマってエンブリヲの遺伝子操作から逃れた女性のことでしょう?だからマナが使えない。
マナに頼り切った生活してたら、マナが無くなったら彼らは料理一つ、お風呂一つ自力で出来ないじゃないですか。
それって人間どころか、生き物としてどうなんです?
自分の食い扶持も、身の回りのことも自力で出来ないなんて。
猫ですら自分で毛づくろいもするし、餌くらい自力でとってくるんですよ?
私には、ノーマの方が『生き物としても優れてる』って思います。
モモカさんは自力で色々出来るみたいですし、別として。
……まぁ、魔従教団のドグマ(魔法)を扱う私が言うのも何ですけどね」
回想ココマデ
刻晴の本心
刻晴「私は……サリアのことを、外見と声が同じで、性格が似ている、と表面的なことしか見れてなかったんですね」
ナヒーダ「でもサリアは本当に刻晴を大切な友人だと思っているから、自分達の諍いが原因で甘雨に影響を与えたことを今でも申し訳なく思ってるの。
それでも、溜まって行けば、今回みたいに爆発することだってあるわ。
……私や刻晴がテイワットで美食や綺麗な場所の観光を提供していくなど、お互いに交流することで彼女達の心の傷も少しずつでも癒えていくかも知れない。
それにアル・ワースの軍事技術は私達にとっても大切な知恵になる。
機動兵器の存在なんて、フォンテーヌのクロックワーク・マシナリーを凌駕する技術だもの。
……そうやって支え合って生きていくのよ、私達は」
刻晴「そう言えば……ヴィヴィアン砲・本気モードを神々に向けた訓練の時、帝君も似たようなことを言っていましたね」
原神×クロスアンジュ 第34話『ヴィヴィアン砲、テイワットの国防に使うことを検討される』より回想
鍾離「彼女等の力は感情と直結している。
故に、精神的な弱点を把握し、対策することは、彼女ら自身と彼女等の機体の戦闘能力を最大限に引き出すために不可欠である。
彼女等は、他者から見れば常識外れな言動や感情を抱くかもしれない。
しかし、その歪みこそが、人間の極限の真理を体現している。
彼女等であれば、神々の弱点という『真実』を、曲げることなく受け止められるだろう」
回想ココマデ
ナヒーダ「私もモラクスの見解と同じよ。ふふっ……もし刻晴がパラメイル第一中隊にいたら、刻晴はアンジュより過激になっていたかもしれないわね」
刻晴「それか、さっさと死んでしまうか、生き残ったらサリアのようになっていたかもしれませんね。私達……声だけじゃなくて、魂の在り方まで似ていますから」
ナヒーダ「まだ契約違反を覚悟で、璃月の評価を地に落とすか職も辞する覚悟でアル・ワースとの関係遮断を進めたい?」
刻晴「草神様、ヴィヴィアンとは違う意味で意地が悪いですね……私の口から『私が間違ってました。二度とそんな軽薄なことは考えません』って言わせたいんでしょう?」
ナヒーダ「あなたは始めに『甘雨のために』って言ったけど、それは嘘じゃないかもしれないけど、本当の理由は別のところにあるのよね?
素人判断で服薬を途中で辞めることが百害あって一利なしなんてこと、玉衡が分からないはずがないもの。
そこで私は一つの仮説を立てた。
『刻晴は、サリアと言う友の中の獣のような一面を見る事を耐えられなかった』
『そして、サリアに自己投影してしまい、まるで刻晴自身が甘雨に対して、そんなことをしているような気がしてしまった』
『だから感情的になって、権限を使ってアル・ワースとの関係を断とうとした』
……違うかしら?」
刻晴「……ナヒーダ様、元素スキルで私の思考を覗いてませんか?(全部、見透かされてるじゃないの……知恵の神は伊達じゃないんだろうけど……)」
ナヒーダ「そんなことしてないわ。刻晴もサリアと同じで、潔癖なところがあるのと、すぐに感情的になりやすいところがあるから分かりやすいだけよ。
今回の話はモラクスや璃月の仙人達には秘密にしておくわね。
特に、降魔大聖とかが知ったら『やはり、人の身で我等が背負う業障を背負えるはずが無いのだ』と言われちゃいそうだもの。
後、サリアとアンジュの激しい喧嘩も甘雨の目に触れないようにしておくわ」
刻晴「ありがとうございます、ナヒーダ様……(アルハイゼンにヴィヴィアン砲を使って叱咤した時もそうだけど、草神様は優しいだけじゃなく、間違ったことをした時は劇薬を使ってでも矯正してくれるのね……いや、それも含めて彼女の優しさなのでしょう)」